お通夜の食事(通夜振る舞い)の意義とは?マナーや費用、近年の傾向を詳しく解説
お通夜に参列した際や、遺族としてお通夜を執り行う際、頭を悩ませるのが「食事」についてです。お通夜の後に提供される食事は「通夜振る舞い(つやぶるまい)」と呼ばれ、単なる会食以上の深い意味を持っています。
「どの程度の範囲の人に声をかければいいの?」「参列したときは必ず食べないといけないの?」といった疑問や、最近増えている形式の変化など、知っておきたいポイントを優しく丁寧に解説します。
1. 通夜振る舞い(つやぶるまい)の本来の意味
お通夜の後に振る舞われる食事には、主に2つの意味が込められています。
供養の一環: 故人様との最後の食事を共にし、思い出を語り合うことで故人様を偲ぶ、大切な供養の儀式です。
参列者への感謝: 忙しい中を駆けつけてくれた参列者に対し、遺族が感謝の意を表す「おもてなし」の場でもあります。
かつては「忌明け」まで肉や魚を避ける習慣もありましたが、現代では参列者の体力を考慮し、お寿司やオードブルなどの華やかな食事が並ぶのが一般的です。
2. 遺族側が知っておきたい準備と費用の対策
遺族としてお通夜を主催する場合、食事の準備は葬儀社との打ち合わせで決定します。
食事の形式と選び方
大皿料理(ビュッフェ形式): お寿司、サンドイッチ、オードブルなど。人数が変動しやすいお通夜に適しており、最も選ばれている形式です。
個別膳(お弁当): 近年、衛生面への配慮や家族葬の増加に伴い、一人ひとりに配膳するスタイルも増えています。
費用の目安と節約のポイント
通夜振る舞いの費用は、「単価 × 予想人数」で計算されます。
目安: 参列者一人あたり3,000円〜5,000円程度が一般的です。
対策: 余分な廃棄を減らすため、あらかじめ親族の人数を確定させ、一般参列者は少し少なめに見積もっておく(足りない場合は追加できるプランを選ぶ)のが賢い方法です。
案内する範囲
地域によって慣習が異なります。関東圏では一般参列者にも広く声をかけることが多いですが、関西圏では親族のみで行うケースも目立ちます。迷った場合は、地域の風習に詳しい葬儀社のスタッフに相談するのが一番安心です。
3. 参列者側が守るべき食事のマナー
お通夜に呼ばれた際、食事を勧められたらどう振る舞うのが正解でしょうか。
勧められたら「一口でも箸をつける」
通夜振る舞いは供養の一部です。たとえお腹が空いていなくても、一口でも頂くのが故人様への供養であり、遺族の厚意に対するマナーです。
長居は禁物
通夜振る舞いの席は、宴会ではありません。遺族は心身ともに疲弊している時期です。30分〜1時間程度を目安に、頃合いを見て退席するのが思いやりです。
会話の内容に気をつける
故人様の思い出を語るのは良いことですが、大きな声で笑ったり、死因を詳しく聞き出したりするのは避けましょう。また、仕事の話や世間話に夢中になりすぎないよう注意が必要です。
4. 近年のお通夜の食事事情:変わりゆくスタイル
ライフスタイルの変化に伴い、お通夜の食事の形も多様化しています。
「お持ち帰り」への移行
衛生面への意識の高まりから、会場での食事を控え、代わりに「折り詰め弁当」や「グルメカタログギフト」「返礼品としての茶菓子」をお渡しするスタイルが非常に増えています。これなら参列者も自宅でゆっくりと故人を偲ぶことができます。
家族葬での食事
家族や親しい友人だけのお通夜では、故人様が好きだったお店の料理をデリバリーしたり、レストランを予約したりするなど、形式にとらわれないアットホームな会食を選ぶ方も多いです。
5. 通夜振る舞いを辞退する場合の対応
もし、どうしても急ぎの用事がある場合や体調が優れない場合は、食事を辞退しても失礼にはあたりません。
断り方: 遺族や係の方に声をかけられたら、「あいにく差し支える用事がございますので、お先に失礼させていただきます。お気遣いありがとうございます」と、感謝を添えて丁寧にお断りしましょう。
タイミング: 焼香が終わった後、そのまま静かに退席するのがスムーズです。
6. まとめ:感謝の気持ちを分かち合う時間に
お通夜の食事は、悲しみの中にいる遺族と参列者が、故人様を通じて心を寄せる大切な時間です。
豪華な料理を用意することや、形式通りに進めることよりも、お互いを労わり、故人様を温かく送り出そうとする気持ちが何よりも大切です。準備する側も参列する側も、基本のマナーを押さえつつ、相手への思いやりを忘れずに過ごしてください。
この記事が、お通夜という大切な場での不安を解消し、穏やかなお別れの時間を過ごすための一助となれば幸いです。
お通夜の食事に関するFAQ
Q. お酒は飲んでもいいのですか?
A. ビールや日本酒などが用意されていることが多く、頂いても問題ありません。ただし、お清めの意味合いがあるため、飲みすぎたり酔っ払ったりするのは厳禁です。
Q. 忌中(四十九日まで)に食べてはいけないものはありますか?
A. 伝統的には「四つ足生臭もの(肉や魚)」を避ける精進料理が基本でしたが、現在では通夜振る舞いや精進落としで肉や魚を食べることに抵抗を感じる人は少なくなっています。
Q. 案内係に「食事へどうぞ」と言われなかったら?
A. 地域や葬儀の規模によっては、親族のみで食事を行う場合があります。案内がなければ、そのまま受付に一礼して退席して構いません。